特集 不登校_教職員の皆さんへ_

「安心感」が次への意欲を引き出します。

新年度に向けて、今やるべきこと、大切なことは?



 これから年度末、そして新年度に向けて、超多忙な毎日になるであろう先生方に対して、とても心苦しいのですが、不登校に苦しんでいる子どもたちや保護者のために、あと2か月で大切なことをお伝えしたいと思います。

 はじめに、学校に行けない子や教室に入れず別室で過ごす子たちは、今心の中にどんな思いを抱いているでしょうか。4月には進級、進学の時がやってきます。想像してみましょう。
 「ますます周りから取り残されていくのではないか」「この先どうなってしまうのだろう」という大きな不安、「どうせ変わらない」というあきらめ、「○○になってほしいな」という遠慮がちな希望や期待など、いろんな思いが頭の中を駆け巡り、心が落ち着かない日々を送っているのではないかと、私は想像しています。
 そんな思いを受け止め、少しでも明るい4月を迎えることができるよう、応援の手立てを用意して、アプローチしていくのが今の時期ではないでしょうか。



 では、どんな応援を用意していけばよいのでしょうか。
 まず大切なのは、「脅かさない」ことです。間違っても学校に来ていないこと、教室に入れないことを責めてはいけません。また、無理に会おうとしたり話そうとしたりすることも「脅かし」になります。
 それと共に大切なのが「安心感を与える」ことです。その子なりに大きな不安を抱えながら毎日を過ごしているその心に寄り添いましょう。「心配だよね、苦しいよね。」「大丈夫だよ。」「これからのこと、一緒に考えさせてね。」と寄り添い、安心感を与えてください。会えない場合は、メッセージにして伝えるなど工夫しましょう。
 そして、具体的な手立てとして、まず、本人の思いや願い、困り感などを聞く機会をどのようにもつか、スモールステップでいくつか案を用意して提案します。その子が最も安心してできそうな形で会う機会を設定しましょう。手紙やオンラインもありです。目的は、その子の思いを知ることです。
 次に、その子の不安や困り感を和らげ、自信を育てられる手だてをいくつか用意して提案します。こちらもスモールステップで、小さな改善、小さな取組からでよいので、確実にできそうなことを提案していきましょう。

 注意すべきことは二つ。「本人が決めること」と「急がないこと」です。本人が決めたことでなければさせられ感が残ります。また、歩みはとてもゆっくりです。年度末になってもできないかもしれません。でも、決して焦らず、あくまでその子のペースで行きましょう。学校や先生のペースを押し付けるのは禁物です。仮に年度末までにできなくても、わずかでもできたこと、進んだことを喜び合いましょう。自分で決められたこと、会えたことだってすごいことなのです。

 では、これらはいつ始めたらよいでしょうか。
 迷わず今から取り掛かるべきです。先に述べたように、もうすでに本人や保護者は不安な思いを巡らせています。「自分が望む形で4月を迎えられるだろうか、何も変わらずこのまま4月を迎えたらどうしよう、でも自分だけではできない、どうしたらいいんだ…。」などと不安を募らせていることでしょう。



 最後に大切なことをお願いします。
 それは、4月からの心の準備ができるように、気になっているであろう知りたい情報を早めに提供し、きちんと引継ぎをしていくことです。担任の交代やクラス替えがある場合、可能であればあらかじめ新担任と顔合わせしたり、クラスのメンバーを知らせたりすることは、いけないことではありません。学校の判断でできることです。そして、現在とてもよい対応ができていても、人が代わる場合4月からも同じようにできるとは限らないことを説明し、精一杯努力することをお伝えして理解していただきましょう。
 加えて、教師には教える責任があるからと、3月が終わるまでに無理に学習を詰め込むような対応はやめましょう。それこそ「脅かし」になってしまいます。大切なのは、きちんとその子の学びの現状を引き継ぐことです。

 是非とも子どもや保護者の立場になって、何が不安か、何が必要かを考え、安心材料を提供できるよう努めていただきたいと思います。その際は必ずチームで対応されるとよいと思います。困った時は当センターを含め、ぜひ関係機関に相談することをお勧めします。


2025年01月21日 竹内 学